都市化された内湾域が大気中の二酸化炭素(CO_)の吸収源であることは先行研究から示唆されていましたが、その規定要因に関する正確な評価はなされていませんでした。国立環境研究所・地球環境研究センターの所立樹特別研究員らと、港湾空港技術研究所、静岡大学、大阪市立大学の共同研究チームは、篤志貨物船(商船)や調査船の観測データを基に、2005年から2016年(大阪湾は2011年から)の東京湾・伊勢湾・大阪湾の湾内とその周辺海域の海洋生物活動による大気中CO_の吸収量を初めて明らかにしました。研究の結果、これらの内湾では沿岸域としては世界でも有数のCO_吸収域であることが明らかとなりました。また海洋生物活動による大気中CO_の吸収量は内湾域の吸収量の最大で約3割を占めており、湾内に流入する適度の栄養塩を含んだ下水処理水が活発な海洋生物活動を促進していることが主要な要因となっていました。沿岸域では今後も世界的に人口増加や産業の拡大を伴う都市化が進むことが予測されていますが、本研究で得られた知見は、都市化に対応した下水処理により、有機物を効果的に除去する一方、適度の栄養塩濃度を保つことが炭素循環を通じた将来の気候変動対策の一つになりうることを示唆しています。
本研究成果は、海洋学分野の学術誌「Journal of Geophysical
Research-Oceans」に2021年5月13日付でオンライン先行公開されました。
【プレスリリース】都市内湾域の生物活動による二酸化炭素吸収メカニズムを解明 −都市内湾の生物活動による気候変動対策の可能性−
静岡大学
参照ページリンク:https://www.shizuoka.ac.jp/news/detail.html?CN=7307