イェール大学のチームが研究における遺伝的プライバシーを保護する方法を発見

機能性ゲノミクスの時代になり、科学者は病気や健康の細胞活性に関する膨大なデータを解析することが可能になった。これらのデータが研究室間で共有されればされるほど、病気につながる遺伝子を見つけるための科学者の力は大きくなっていくのである。

しかし、このように機能的ゲノミクスデータが広く共有されていることは、個人の遺伝的プライバシーを保護することを困難にするという難問を生み出しているのだ。

イェール大学の科学者チームは、研究者間で機能的なゲノミクスデータを自由に交換できる利点を維持しつつ、人々の個人的な遺伝情報を保護する方法を開発したという新しい報告書を発表した。

11月12日にジャーナル「Cell」に発表されたこの報告書は、上級著者の Mark Gerstein氏(生物医学情報学の Albert L Williams教授、分子生物物理学・生化学、コンピュータサイエンス、統計学・データサイエンスの教授)と、Gerstein氏の研究室のポスドク研究員である Gamze Gursoy氏(筆頭著者)が主導している。

「遺伝情報は最も基本的な情報である。もし誰かがあなたの金融情報にアクセスしたとしても、新しいクレジットカードを発行してもらうことはできます。 

しかし、ゲノムがデータベースに登録されてしまうと、あなただけでなくあなたの子供、孫世代まで立ち往生してしまうでしょう。」と、Gerstein氏は語っている。

Ancestry.comのようなサービスによる遺伝子検査の普及により、すでに個人が知らなかった親族を特定することができるようになっている。しかしながら、科学者によって収集された膨大な遺伝子データベースは、本来使用されるべきではない用途にも利用できる可能性があるのだ。

例えば、コーヒーカップから採取したDNAを悪意を持って所持している人が、以前にAIDsに関する研究に参加していた場合、理論的にはHIVを持っている人を特定することができてしまう。脅迫の可能性に加え、生命保険会社は、その個人に対して保険の適用を拒否することもできてしまうのだ。同じようなリスクは、がんの発症リスクが高い人にも存在する。

プライバシーのリスクは何世代にも及ぶ。個人のゲノムデータは決して消去されないので、統合失調症の男性の孫は、いつの日か病気を発症する遺伝的素因のために差別に直面することになるかもしれないのだ。

社会的なリスクもある。例えば、敵対的な外国政府がデータベースをハッキングして、米国市民に関する有害な遺伝情報を探し出す可能性がある。あるいは、いわゆる優生学プログラムのように、権威主義的な政府が「望ましくない形質」を持つ個人を特定して害を与えるため、いくつかのデータを使用する可能性がある。

「遺伝学には問題のある歴史があります」と、Gerstein氏は述べる。

このようなプライバシーの脅威を克服するため、Gursoy氏とGerstein氏は、研究のデータがどれくらい「漏れているか」、あるいは研究に参加している個人を特定する情報が含まれているかを定量化する方法を開発した。そして、研究者が使用するためのデータの大部分を保存しながら、個人を特定できる少量の遺伝情報を「サニタイズ」したり、アクセスをブロックしたりすることが可能となったのだ。

「私たちは個人のプライバシーを保護しつつ、社会にとって紛れもなく良い遺伝子研究への参加を奨励することができます」とGerstein氏は語った。

【原典】Yale team finds way to protect genetic privacy in research(12 NOV 2020)

URL;https://news.yale.edu/2020/11/12/yale-team-finds-way-protect-genetic-privacy-research

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